呉服の可能性を信じて山村の洋品店から事業を拡大させた話
限界集落の洋品店、この言葉から連想されるのは、廃業の二文字ではないでしょうか。
限界集落に店を構え、しかも市街地の小売店が大型化しつつあった筆者の置かれた恵まれない状況にあった筆者は工夫と努力で事業を発展させました。
その経緯はどのようなものだったのか、そんな内容が書かれた本です。
筆者が置かれた状況
長野県は山に囲まれた内陸県です。
その長野県でも更に山に囲まれた鬼無里(きなさ)という集落で洋品店を経営していたのが筆者です。
当時(数十年以上前)から人口流出が見られ、洋品店という仕事も徐々にジリ貧を迎えているという状況、決して恵まれた環境ではなく事業の見直しを迫られつつありました。
どのようにして事業を成長させていったのか
筆者が注目したのは、姉が呉服の着付けの先生をしていたことです。
そこで呉服に触れる機会があり、呉服に惹かれていきました。
当初は洋品店と異なった呉服というジャンルでしたが、呉服店という業態に改めると共に、長野市街地へ移転を決意しました。
その後大島紬の大量返品など呉服ならではの様々な苦労を重ねるものの、自分の現状を打破した呉服にこだわり、困難を克服していきます。
そんな呉服業もやがて着物離れという憂き目にあいました。
しかし、あることがきっかけでフォトスタジオの業態に注目、子どもや成人向けの衣装、特に和装の質の低さに衝撃を受けます。
本物の和装でハレの日が撮影出来たらきっといいだろう、そんな情熱が全くノウハウのないフォトスタジオ経営にも足を踏み入れたのでした。
本物の、質の高い着物を使ったフォトスタジオは成功をおさめ、そのノウハウを他県の企業に提供するコンサルタント業務を始め、現在に至るまでの足跡を書いたものが本書です。
天職という発想
着物を天職と定め、この天職と共にどのように生きていけばいいかということを自問してきた筆者の半生を描いています。
自分の仕事に何らかの不満や転職を考えている方も少なくないはずです。
こういった発想は珍しいかもしれませんが、もう一度天職だと思って現在の仕事を発展させていこうという意欲が重要であるかもしれません。
まとめ
自分の仕事を天職だと思って取り組むことで、絶望的な環境であっても活路を見出せるというのが本書の趣旨といえるかもしれません。
やみくもに隣県である岐阜県や新潟県、群馬県、静岡県、あるいは山梨県と言った場所に、規模を拡大するのではなく、あくまで地域密着型、長野県内の出店を中心に事業を展開しています。
スモールビジネスというと語弊がありますが、こういった地域の実業家の書いたビジネス書というのも貴重な存在といえるのではないでしょうか。